会社を支える3つの柱

世の中には、経営理念のほかに、企業理念、ミッション、クレド、ミッション、経営方針、コアバリュー等々、様々な言葉があり、いろんな企業がそれなりの解釈で、独自の定義のもと、使い分けられているようです。

これらの明確な正解はありません。自社の中で、明確に定義が共有化され、全社員で、異口同音、理解されていれば、それが正解ではないでしょうか。

このSR経営では、経営理念とビジョン、そして行動指針を3つの柱として設定していきます。

もちろんこの定義に従う必要はありません。

その意味を理解されて、自社に合った独自の設定を行われることをお勧めします。

経営理念とは

経営理念とは、自社が目指すべき最終のゴールであり、わが社がこの社会に存在している意義、理由、そして社会に対する役割のことです。

経営理念と似て非なるもの

それは、野心です。

野心とは、自分が成し遂げたい願望のこと。日本1の〇〇になる、売上〇を達成するなどです。もちろんこれ自体は大変すばらしい目標であり、大切な事です。

では、野心と経営理念の違いは何か?

理念とは、自分の代ではなしえないような、社会に対する貢献のこと。その想いを次の世代に繋いでいくようなものの事です。そのためには、自分の代では成しえないものを、次の代、またその次の代に繋いでいく必要があります。気の遠くなる時間が必要なものです。

一方の野心は、己一代で成し遂げたい願望の事。つまり絶対的な時間軸が異なります。

企業経営は命懸け

企業経営者にとって、経営はまさに人生を賭した命懸けの仕事ではないでしょうか。

だとすれば、会社の最終ゴールである経営理念は、わが命を懸けるに値するものではなくてはいけません。

誰かが決めた理念や、耳障りがいいだけの理念で自分の人生が左右されては、たまったもんじゃない。そんな、理念に本気になれるはずがない。

だから、経営理念は経営者の価値観、哲学に基づいてしっかりと腹に落ちたものでなければなりません。

2代目経営者の経営理念

事業承継により、経営理念を引き継いだ後継者であれば、創業者の価値観をしっかりと踏まえたうえで、自らが人生をかけて成し遂げたい使命がそこにあるかどうか、一度しっかり考えてみてはどうでしょう。

しかし、先代とともに歩まれ、バトンを渡された後継者には、創業者にも勝るとも劣らない、同じ思いが生まれていることは決して不思議ではありません。

経営者の価値観、使命感を知る方法

その答えは、どんな本を読んでも、研修会に出ても、誰かに教えてもらおうとしても答えはありません。

唯一、そのヒントを与えてくれるのは、私自身の過去。起こった出来事、そこで感じた事。

うれしかったこと、悔しかったこと、不思議にうまくいったこと、何度も同じ失敗を繰り返したこと。

出会った人たちからの学び。

それら一つ一つを振り返ってみることで、本当の自分に出会え、何が私なのかを気づかせてくれます。

(以下の20の質問に答えてみてください)

  • 最も楽しかったことは?
  • 最もつらかったことは?
  • 一番感動したことは?
  • 影響を受けた人は誰ですか?
  • 一番努力したことは?
  • 親から受けた影響な何?
  • 好きな人はどんな人?
  • 苦手な人はどんな人?
  • 影響を受けた本、映画は?
  • 一番幸せな時間はどんな時?
  • 私の強味は何?
  • 自分の葬式で『どんな人だった』と言われたい?
  • 座右の銘は? 好きな言葉は?
  • 大事にしてきた判断基準は?
  • どんな人間になりたいですか?
  • 困難な出来事からの学んだことは?
  • 絶対やりたくないことは?
  • これからの人生で成し遂げたいことは?
  • 大切にした価値観は?
  • 私の使命は?

思考ツール マンダラート

世の中には様々な思考ツールがありますが、大谷翔平選手が高校時代に使ったマンダラートを使って、わが社の経営理念を再考してみましょう。

  • 中央にテーマを記入
  • 周りのAからHまでの8つのマスにそれらに関する大切なワードを入れていきます
  • AからHのワードは、外枠の中央に自動的に(エクセル)記入されます。
  • 今度はAからHまでのそれぞれのテーマの大切なワードを入れていきます。

出来上がった表を俯瞰してみるとき、目標を達成するための様々な項目の因果関係や、優先順位が見えてきます。

経営者が自ら作った経営理念に『共鳴』が生まれる

以上の理由で、経営理念だけは、経営者自らが時間をかけて、作り上げるものです。

そんな魂のこもった経営理念に、社員や、ビジネスパートナーや社会の共鳴が起こります。

『ぜひ、私も一緒に達成させたい』『同じ船に乗せてください』『ぜひ、協力させてください』

その時、経営者一人では成しえない大きなものが動き出し、船は進み始めます。

社会が期待しているゴールに向かって。

共鳴が生まれる経営理念とは

1つ目はわが社らしい事。どこの会社にも共通するようなことだけではなく、わが社独自の、わが社だからこその言葉であることです。

例えば、他社の事例を見てみると

キリン株式会社

飲みもの」を進化させることで、
「みんなの日常」をあたらしくしていく。

タニタ

はかる』を通じて世界の人々の健康つくりに貢献

セブンイレブン・ジャパン

既存中小小売店の近代化と活性化

共存共栄

ユニクロ

を変え、常識を変え、世界を変えていく

いずれも、その会社らしく、その会社ゆえの言葉がちりばめられています。

2つ目は具体的でシンプルな事

シンプルで分かりやすく端的に表現されているけれど、その背景には考え抜かれた深い意味と思いが詰まっているということ。

だから、経営理念には解説書が必要です。

決して誤解されないよう、一人歩きさせないよう、その言葉の本当の意味を補足してあげる必要があります。

(中央タクシーの例)

経営理念 『お客様が先、利益は後』

お客様とは

・自分以外の全ての方

・生活を支えてくれる方々

・足りない部分を教えてくれる人生の師匠

利益とは

・お客様の満足料

・周到な計画と強固な意志で拡大するもの

・拡大発展するためのリスク克服原資

など、社員さんや、関係者が理解できる言葉で説明します。

3つめは社長が最高のプレゼンターであること

経営理念とは、社長の生き様でもあります。

だから、だれよりも心を込めて、魂を込めて伝えられるはずです。

たとえ喋りが苦手だとしても、 本気は伝わります。

しかし、練習は必要です。不得手でも、伝えることは避けては通ることができない社長の大切な役割です。

社長と社員の違い

社長の作った経営理念に賛同し、志を社員さんが共有してくれることは、大変重要なことです。

すばらしい経営理念も、社長のものだけでは意味がありません。

しかし、社長と社員さんには絶対的な違いがあります。

それは、

最終決定権は社長にしかない。(社員は決めれない)ということです。

ともすれば、決定権がないことは、責任感の欠如を生んでしまいます。(最後は社長がいるから大丈夫という安堵感)。しかし、場合によっては、これらは他責になってしまうことがある。

『会社が悪い、上司が悪い、私は被害者・・・』その想いはいずれ、『どうせ無理、やっても無駄』といった諦めに変わってしまうかもしれません。

しかし、決定権はないけれど、『私に出来る事は何?』と自問し、『自責で考え』、生き生きと仕事をして成長している社員さんがいるもの事実です。

では、どうやったら後者のような社員さんを増やしていけばいいのでしょう?

会社の経営理念と社員さんの接点

社員さんには、自分の大切な人生があり、かけがえのない家族があります。

家計を安定させるために給料を増やし、家族との大切な時間を共有するためや、自分の価値観を満たすための休日を獲得することは大きな関心ごとです。

あるいは、人生の多くを過ごす職場での人間関係や、自己の成長、自分の仕事への誇りなどがあります。

これらが、経営理念の遂行や、会社の目標達成の為に犠牲になっていては、社員さんの人生は豊かなものになりません。

しかし、会社の理念と社員さんの大切な事とは決して相反するものではない。

そこには明確な接点(クロスポイント)があるはずです。

それらを見つけ出し、目標として掲げる。 SR経営ではそのことをビジョンと呼びます。

ビジョンとは

①経営理念につながる

②社員全員が ワクワクするような 獲得したい状態・モノ

③中長期的な目標 (いつまでに、何を、どうする)

と定義しています。

経営理念の達成には、多くの時間がかかります。

だからこそ、経営理念に向かう道中に明確なワクワクするような目標を設定します。

わが社の事業で、お客様の真の幸せを獲得するためには、

まずは、こんな商品を完成させよう、そのためには会社の規模を今の倍にしよう。

その時には、生産性が上がって、社員の給料を1.5倍にしよう

『今はここにいるけれど、我々〇年後に、あそこに立つ、必ず立って見せる』

『下を向いて落ち込んでる暇も、社内でくだらん争いやってる暇も我々にはない』

『さあ、今日もみんなでビジョンに向かって進もう』

お互いを鼓舞しあえ、行動を起こさざるおえなくなるもの

それがビジョンです

ビジョンを社員と作るための質問

経営理念は社長自らが作りました。

しかし、ビジョンは社員さんを巻き込んで、作りたいものです。

なぜなら、自分が作った、あるいは携わって出来た理念は、自分のものになるからです。

自分のビジョンは、何よりも『達成したい』と思えるからです。

しかし、いきなり『わが社のビジョン、何がいい?』

と聞かれても、ほぼ100%近く、出てきません。

それどころか、それ『社長の仕事じゃないんですか?』と反感を買いかねません。

その為に必要なものの1つが、場づくりです

日々の業務が忙しいときに、呼ばれて帰りが遅くなりそうな時に聞かれても迷惑なだけです。

支障がないときに、ゆっくり考えられる環境が必要です。

ある企業では、合宿と称して昼からビジョンミーティングを行い、夜は少しだけお酒が入った後に、再度話し合いを行いました。 ご想像の通り、夕食後に実に多くの魅力的なアイデアが次々に飛び出してきました。

2つ目は、質問です。

いきなり聞かれてもビジョンは出てきません。

応えやすい質問から、徐々に心の中にある、『こんな会社にしたい』『これ獲得したい』に迫っていきましょう。

どんな職場が理想だろう?

お客さんにどんな風に喜んでもらいたい?

我々はどんな成長ができるだろう?

その結果

給料をどれくらい獲得にしていこうか?

どんな働き方の会社にしようか?

社員さんだってしっかりわかってます。単なる願望だけではそれらは実現するはずないことを。

だから、ビジョンを設定しながら、そのための方法を同時に考え始めてくれているはずです。

理念・ビジョンは達成させていくべきもの

達成するためには、それに応じた正しい行動を習慣化していかなければなりません。

それを明確にしたものが行動指針です。

行動指針とは

理念・ビジョンに直結した大切な考え方

行動を判断する基準(幅)のことです。

京セラの稲盛和夫さんは仕事の成果を以下の数式で表しました。

仕事の成果

熱意と能力は0から100まである。
しかし、考え方はマイナス100からプラス100まである。

これらは足し算ではなく、掛け算だ。 つまり、どんなに熱意があり能力があっても考え方がマイナスであれば、成果は出ない。いや、むしろ大きなマイナスの成果となってします。

この考えにあたるものが行動指針

わが社の譲れない拘りの事。

どんなに利益を脅かそうとも安全だけは譲らない(ANA)とか

スピードが何より大事(楽天)など

挨拶だけは、どこにも負けない

仲間を大切にする。

工場内を清潔に保つ

など、様々

スターバックスの行動指針による物語

スターバックスの行動指針は『Just Say Yes』

(道徳、法律、倫理に反しない限りお客様が喜んでくださる事は何でもして差し上げる)

(あるお店の前で車の事故)

事故を起こして慌てて不安そうな女性に

『少しでも落ち着いて頂きたくて』と珈琲を持って行った

(いつかスタバで働きたいと言っていた、少女が難病の手術で渡米する日)

前日、父親が娘の好きだったシナモンロールを明日の朝、食べたいと言ってきたが営業時間外でかなわなかった。

シナモンロールを自分で時間外に焼いて、駅まで持って行った

理念・ビジョン・行動指針を浸透させる方法

①新入社員研修(採用時の説明

②朝礼や全社会議で唱和・説明

③定期的勉強会の実施

④わかりやすい場所に掲載

⑤名刺・封筒への印刷

⑥日報による運用

⑦冊子やカード(クレドカード)を配布

⑧評価制度との連動(行動指針

様々な企業が、独自の方法を考え、社内に浸透を図ろうとしています。

そのどれもが素晴らしく、それなりの成果を上げています。

大切なことは、他社の真似ではなく、わが社らしい浸透方法の選択と言えます。

経営理念の遂行に求められるもの

しかし、最高の浸透策。それは経営者自らの何があっても浸透させて実現させるといった不退転『覚悟』 と、そのためにはどんなことがあっても譲らない、逃げないといった『勇気』が必要です。